先代から地元の木を扱って50年。木材を変幻自在に操る、チェーンソーマスター。/藤木健司さん藤木製材代表

全国でも有数の製材地だった美山地域で50年以上前に先代が始めた藤木製材を継いだ藤木健司さん。ものづくりが昔から好きな藤木さんが始めたのが、チェーンソーアートにスウェーデントーチ。休日を使いながら作り上げていきます。どんなつくり方をするのかお話をお伺いしました。

会社員から、娘婿として製材屋の2代目に

50年以上前に先代が始めた藤木製材を藤木健司さんが継いだのは、約30年前になります。娘婿だった藤木さんは、会社員をしていました。ところが先代が体調を崩し、「このまま終わりにするのも・・・」という思いから、後を継ぐことになりました。一番苦労したのが、原木の仕入れ。1年間先代と一緒に市場に通い、目利きができるようになるまで学びました。藤木さんから「色がよくて木目が細いもの」というコツを1つ教えてもらいました。目利きができるようになると、見ただけで何年ものの木かわかるようになるそうです。

時代の流れで製材業界も大きな変化

藤木さんが継いだ当初は、大きないい木を仕入れて住宅の鴨居用などとして販売していました。いい木を選ぶ目利き力が必要な上、販売単価も高くてとてもやりがいがあったそうです。ところが住宅の工法が大きく変わり、鴨居などを使用する住宅は減少。さらに外壁も防火の観点などから石膏に置き換わり、さまざまな部分に海外産のコンパネが使われるようになっていきます。この時代の変化によって、全国でも有数の製材地だった美山では、製材屋が半分以下になってしまいました。

それでも藤木製材が残っているのは、周囲の倍の4mという長材を挽いているから。昔からこの辺りでは「美山の杉板といえば2m」と言われていましたが、周囲との差別化を図るため、4mの長材にこだわりを持っていました。そこには「1人で大量生産ができない分、少しでも差別化を行い高単価のものを扱いたい」という思いもありました。

趣味の域を超えた芸術のチェーンソーアート

ものづくりが昔から好きな藤木さんが50年ほど前から始めたのが、チェーンソーアート。休日を使いながら、約4ヶ月で1体を作り上げます。自分も好きで周りにも喜んでもらえる動物を作っており、口コミで人気が出ているそうです。
そして昨年から作り始めたのが、キャンプブームに乗って人気が出ている「スウェーデントーチ」です。「スウェーデントーチ」とは、丸太に直接火をつけ、焚き火として使ったり、暖を取ったりするもの。

丸太に十字に切り込みを入れるだけの物もありますが、藤木さんのところでは製材屋としてのこだわりを持って作っています。ただ十字に切り込みを入れるだけでなく、上部の真ん中をチェーンソーで丸く削り、セットで届く「おが粉」や「木屑」を入れて火をつけられるようにしています。この丸い窪みを作るのは、チェーンソーの手前部分を当てて削るので跳ねやすく危ない作業で、チェーンソー歴30年の藤木さんでも大変な作業だと言います。さらに丸太の特徴を活かして、あえて木の皮を残したり、表面を削って白木のようにしたりと1つずつ表情の違うものが生まれていました。

最後に、藤木さんの考える山県の魅力を聞いてみると、「夜の静けさと、満天の星空」そして「冷蔵庫のように冷たいけれど、きれいな川」との答えが。満天の星空の下、川の流れる音を聴きながら、藤木さんの手作りのスウェーデントーチの炎を眺める‥五感で山県を満喫できる、贅沢な時間を想像してしまいました。

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